2023年の初演から2年経って、午前0時のラジオ局が戻ってくる!しかも新たなキャストによる続編!ということで……とっても楽しみにしていた本作。東京公演が始まってから「泣けた!」とあちこちで感想を目にしていましたが、東京千秋楽にして自分内初日をやっとやっと、迎えることができました。
あらすじはこちらを参照いただくとして…
舞台『午前0時のラジオ局 ―満月のSAGA―』公式ホームページ | 2025年公演 | 東京公演・佐賀公演
早速自分なりの感想を。
(ネタバレを含みつつ、ほぼ観劇された人にしか伝わらない書き方になりつつで恐縮です……)
まず、前回も思いましたが派手な演出があるわけでもないし、たった4人のキャストなのに、こんなにも「ファンタジー性と現実性を兼ね備えた人生の物語」を描き切るすごさに脱帽でした……
村山さんによる原作、霧島ロックさんによる台本・演出、そしてキャストのみなさんによる演技。どれが欠けても成立しなかったと思うし、互いが互いにリスペクトされていたからこそ、平和な空気感で(←カテコのトークで本人たちがおっしゃっていた)こんなにもあたたかい作品が作り上げられたのだろうなと……
この物語には、ポップなラジオ番組の世界をベースにしつつも、予期せぬ形で亡くなってしまった人、予期せず大事な人を失ってしまった人、この世に取り残された気持ちで生の世界から死の世界へ行ってしまいそうになる人、時代がつくりだした正義のために自ら死を選びそうになる人……いろんな人たちが出てきて。
ある意味みんな生死の間をさまよってるし、それってこの人たちだけじゃなくて今何事もなく生きているつもりの私たちもみんなそうだな、と。いつ自分が死ぬかわからないし、大事な人を失うかもわからない。
ラジオに亡くなった人からのお便りが届くときに、1枚だけひらひらひら……と落ちてくる演出があるけれど、最後の最後には大量のお便りが上から降ってきて。
ああ、何も三郎くんや花音ちゃんだけの話じゃないんだ、と。亡くなった人と、大事な人を亡くした人が、それぞれに想いを持ってさまよいつづける……というのは誰にでも、いつどの時代にもあることで。こんなにも「ミッドナイト☆レディオステーション」にたくさんお便りが届くのは驚くことでもない。
亡くなった人と、大事な人を亡くした人の物語はある種ありふれたもので、それ自体は特別ではない。でも、それぞれに、それぞれの物語があって。それは唯一無二の特別なもので。その大事な物語の一つを共有してもらったような気持ちでした。
だからこそ、「他人の物語を客観的に観る」というより、それを通して自分の物語はなんだろう……と自然と考えさせられる自分がいて。
私の場合は、去年生まれた娘と入れ違いで亡くなった祖父のことを思い出しました。祖父は船乗りとして戦時中を戦い抜き、その後の激動の時代を生き抜いて、105歳まで生ききった人。三郎くんより少し年上で、どれだけの思いで105歳まで生きてきたのかと思うと頭が下がるし、また会えるなら人生を始めたばかりの娘に会わせてあげたいなあ……ミッドナイト☆レディオステーションの力を借りたくなっちゃうなあ……なんて、思ってみたり。
こんな風に、自分の物語を自然に重ね合わせて自分ごと化できるのって舞台の醍醐味だよなあと思いつつ。パンフレットで福ちゃんが「この作品からメッセージを受け取って、ご自分というフィルターを通したときにどんな思いが生まれるのか」「それを感じて、僕たちも教えていただけたらうれしいです」と言っていたので。拙くても書き綴っておこうかな、と思いこうして書いています。
初演では陽一さんと奥さまの物語に号泣だったわけですが、今回も最後のほうにお2人の関係性が見えるシーンがあって胸熱でしたね……陽一さんと奥さまや、酒谷くんと花音ちゃんの物語を観ているとつい、自分と夫を重ね合わせてしまいます。夫は14歳年上なので、普通に寿命的な意味で考えると私が最後一人になるのか?とか、意外と予期せぬことがあってそうでもないのか?とか……日頃からふと別れのことを考えてしまうことがあって。
でも陽一さんと奥さまや、酒谷くんと花音ちゃんのように、お互いがお互いにとって唯一無二の存在だからこそ成り立つ関係を、私も作っていけたらなあ、なんて。
なんだか物語をベースにした自分語りみたいになってしまいましたが、あらためて演出も演技も本当に素晴らしかったですね……私が号泣したのは、三郎くんの別れのシーンと、花音ちゃんが酒谷くんに説教するシーン。
福ちゃんの三郎くんにはやられました。相変わらずスマートな陽一さんと、まっすぐで一途な三郎くんの演技の振り幅がすごくて……(スマートな陽一さんは、一人の福田悠太ファンとして純粋にときめくこともしばしば。すぐおちゃらけてしまって、あんなにちょっと甘さのある、二枚目よりで爽やかな姿を見れることなかなかないので。笑 開演前後のナレーションのあまーい声もたまりませんでした。笑)
花音ちゃんと酒谷くんのシーンでは、「私のこと忘れて」って酒谷くんにお願いする花音ちゃんが切なすぎて……というのももちろんあったんですが、「酒谷くんのご両親が毎日毎日病院に来て看病してる」ことを酒谷くんに熱く伝える花音ちゃんにやられました。ここでは自分の娘への気持ちに重ね合わせちゃったんですよねー……2年前には娘はこの世にいないし、私は母親ではなかったので、この2025年の今だからこそ芽生えた感情でした。
こんな風に、同じ作品でも観るタイミングによって共感ポイントも変わるのだろうなあとも、あらためて。
こんな風に生死だとか別れだとか書いてると、重くて切ない作品なのかと思いきや……それを感じさせない軽やかさが、何よりもこの作品が好きな理由です。それはやっぱりラジオがベースにあるからなのかな、と。ラジオは心のライフライン。自分だけにそっと寄り添ってくれるようなあたたかさがありながらも、ポップで楽しい気持ちにさせてくれる……決してヘビーリスナーとは言えないレベルの私でもそうだなあと思います。
いつかもっと切実に、ミッドナイト☆レディオステーションの力を借りたくなる日が私にも来てしまうかもしれない。でも、彼らに会える世界線がどこかにあるのかもしれない……と思うと、何が起きるかわからない人生に対して怖さよりもわくわくの気持ちが勝つような気もしてきます。
きっとこれから生きていく中で、ふと思い出すことがあるのだろうなーというこの作品。また陽一さんをはじめ皆さんに会えることを心から楽しみにしています。
あ、最後に!今回のパンフレットさいっっっっっこうでした!コンパクトなサイズ感も読み応えたっぷりなページ数もキャスト陣のビジュアルも!(福ちゃん美しすぎます〜〜〜!!!!)また続編の際にはこちらのパンフの仕様も継続で、ぜひお願いします!笑
初演の感想はこちら。